かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…
そんな木村さんが何故こんな時間に墓場にいるのか?
何か見てはいけないものを見てしまった感じがした。
大庄さんの玄関が開いた音でボクは大庄さんのお宅を見た。
玄関から、ちらちらと小さな灯りが揺れる。
懐中電灯のようだ。
そしてその光はゆっくりと墓の方に降りてくる。
どうやらこちらへ来ようとしているようだ。
木村さんはどうしているのかと思って見ると
そこにもう姿は無かった。
どこへ行ったのだろう?
ボクは立ち上がって辺りを見渡した。
どこにも見当たらなかった。
近づいてくる懐中電灯の光がボクを捕らえた。
「○○運送さんですか?」
大きな声がかかる。
わざわざ迎えに来てくれたのだろうか?
ボクが返事を返すと、大庄さんは墓を横切って近づいてきた。
「こんな時間に本当に申し訳なかったですね〜。どうしても急に必要になっちゃいまして!本当に申し訳ない」
大庄さんの顔が分かるほどになってから
ボクは、やっと一息つけた。
やわらかな月明かりの下
大庄さんは、ボクのクルマまで送ってくれた。
墓場には何の変化も起こらなかった。
ケータイ小説
(C)TAKUHAI-ATHLETE