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ケイタイ小説 想い出幽霊

かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…


想い出幽霊

第十一章:男

生花の配達がほとんどだから、まずは「この花はね…」と始まる。

そしてどんどんと話は脱線していく。

困った事に、その話があまりにも面白くボクも配達を忘れて夢中になる。

そんなある日だった。
木村さんが言った。
めずらしく身の上話をしてきたのだ。
 
 
「アタシ」木村さんは自分の事をアタシと言う。

私でもあたしでもない。
アタシだ。

そんなところもママっぽいのかもしれない。
 
 
「アタシはね、ずっと想ってる人がいるんだよ」
 
 
ご亭主の事か?
そういえば木村さんの表札には一人分しか名前がない。
亡くなったのだろうか?
 
 
「違うよ。アタシはずっと独り者だもん。他に良い人がいるの」
 
  
結婚はしなかったそうだ。
若い頃に大恋愛をしたらしい。
相手は若くして出世したエリート。

やはり木村さんはお店をやっていたそうだ。
それもかなり高級な。
お店が高級なら、お客も高級。

そんなお客の中の一人だったという。

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