かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…
生花の配達がほとんどだから、まずは「この花はね…」と始まる。
そしてどんどんと話は脱線していく。
困った事に、その話があまりにも面白くボクも配達を忘れて夢中になる。
そんなある日だった。
木村さんが言った。
めずらしく身の上話をしてきたのだ。
「アタシ」木村さんは自分の事をアタシと言う。
私でもあたしでもない。
アタシだ。
そんなところもママっぽいのかもしれない。
「アタシはね、ずっと想ってる人がいるんだよ」
ご亭主の事か?
そういえば木村さんの表札には一人分しか名前がない。
亡くなったのだろうか?
「違うよ。アタシはずっと独り者だもん。他に良い人がいるの」
結婚はしなかったそうだ。
若い頃に大恋愛をしたらしい。
相手は若くして出世したエリート。
やはり木村さんはお店をやっていたそうだ。
それもかなり高級な。
お店が高級なら、お客も高級。
そんなお客の中の一人だったという。
ケータイ小説
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