かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…
木村さんは、70歳くらいの一人暮らし。
少し足が悪い。
花が好きなのかな?
生花の配達が多い。
木村さんのお宅は新興住宅地みたいな洒落た家が立ち並ぶ一角にあるが、木村さん宅は平屋の小さな家だ。
それでも、うらぶれた感じはまるでなくて、むしろ「良い味出してるなぁ」と感じるし、近所の家よりも、よほど木村さん宅みたいな家に住んでみたいと思わせるようなセンスの良い家だ。
結構広い庭があって、いつもそこには大きな木が茂り、花が咲いていた。
木村さん本人も年齢を感じさせないような人で、和服が似合いそうな粋で艶やかな雰囲気を漂わせる人だ。
しかし性格は明るく、いろんな話題を出しては笑わせてくれる。
どうも水商売でもやっていたんじゃないかと思うほどに話し上手だ。
そうか。
たぶんそうだな。
きっと何処かでお店でもやっていたんだろう。
黙っている姿は、どこかしら影を感じるように見えるけれど、話し出した姿を煌びやかな場所に移せば何処かのママといってもおかしくない。
いや、その方がピッタリくる。
そんな話好きの性格だから配達員としては多少困る事もある。
配達するたびに「ちょっと上がっていきなさいな」と話し相手にされてしまうのであった。
ケータイ小説
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