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ケイタイ小説 想い出幽霊

かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…


想い出幽霊

第五章:道の樹

歩いていると思ったより怖くなかった。辺りが暗くて全く見えなかったからだ。

墓場だとわかるから怖いのであって、それが見えないのであれば、怖くもなんともなかった。

街灯も届かないくらいの闇が、逆に味方しているようだった。

さあ、早く配達を済ませてしまおう。ボクは、砂利の小道をじゃりじゃり足音を立てて歩いた。


しばらく行くと二股に分かれる地点があった。
右の道は、大きな木があり日中でも薄暗いが近道だ。
左の道は、遠回りになるが開けていて遠く道路も見える。
 
 
さて…。
どちらを進むべきか。
 

ふっ…。
真っ暗なのに、
薄暗いもへったくれもないよな…。
 
ボクは苦笑して、右の道を進んだ。
 
 
足元に気をつけながら進んでいたので、下ばかり見ていた。

ふと目を上げると、大庄さんのお宅はすぐそばに見えていた。

窓の灯りが見える。
 
もうすぐ…だな。
 
そうしてまた足元に目を移した時、視野の隅で、ふわと何かが動いた。
 
ん?
 
 
恐怖も薄れていたボクは、その方向を向いた。
大きな木の傍だ。
 
 
そこに…人がいた。

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