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ケイタイ小説 想い出幽霊

かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…


想い出幽霊

第三章:玉砂利

クルマから降りると、
急に心細くなった。 
当然だが、辺りは真っ暗だ。

遥か下の車道を通るクルマの音も聞こえてこない。

しかも今夜は、
あいにくの曇り空だ。
月明かりさえ味方してくれない。
 
やはり…足を進めるのに躊躇してしまう。

夜のお寺はやっぱり怖い。怖いが配達しなければ帰れない。
 
しかたなく歩を進める。
踏みしめる玉砂利の音だけが響く。

お寺の入口の街灯の光が、ボクの影を薄く長くのばしている。
 
こんな時に限って、自分の書いたメルマガを思い出してしまう。
真夏の夜と都会の海」「昭和から来た男」など…。
 
今にも、開襟シャツを着た黒ブチ眼鏡の男が
目の前に現れそうな恐怖を覚えた。
 
 
カサ。
 
ビクッ!
何?何の音?
 
 
心臓が飛び出すほど驚いて辺りを見回す。
 
しかし何の音もしない。
風で落ち葉でも舞ったか?

辺りはしんと静まりかえっている。それはそれで怖いのだが。


闇はそれだけでボクに恐怖を与える。

しかも場所が場所だ。
違う世界に迷い込んでしまったような錯覚さえある。


再び歩き出す。

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