かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…
クルマから降りると、
急に心細くなった。
当然だが、辺りは真っ暗だ。
遥か下の車道を通るクルマの音も聞こえてこない。
しかも今夜は、
あいにくの曇り空だ。
月明かりさえ味方してくれない。
やはり…足を進めるのに躊躇してしまう。
夜のお寺はやっぱり怖い。怖いが配達しなければ帰れない。
しかたなく歩を進める。
踏みしめる玉砂利の音だけが響く。
お寺の入口の街灯の光が、ボクの影を薄く長くのばしている。
こんな時に限って、自分の書いたメルマガを思い出してしまう。
「真夏の夜と都会の海」「昭和から来た男」など…。
今にも、開襟シャツを着た黒ブチ眼鏡の男が
目の前に現れそうな恐怖を覚えた。
カサ。
ビクッ!
何?何の音?
心臓が飛び出すほど驚いて辺りを見回す。
しかし何の音もしない。
風で落ち葉でも舞ったか?
辺りはしんと静まりかえっている。それはそれで怖いのだが。
闇はそれだけでボクに恐怖を与える。
しかも場所が場所だ。
違う世界に迷い込んでしまったような錯覚さえある。
再び歩き出す。
ケータイ小説
(C)TAKUHAI-ATHLETE