かくも儚い恋心…
一途な想いは、時を越えて今もその胸に生き続ける…
帰りたかったのにはワケがある。
今日の配達が早く終わったからという理由だけではない。この配達先の場所に問題があるのだ。
ここに配達がある時、ボクは決まって日中に配達する。
どんなに時間指定が厳しくても、だ。ここに配達がある時には、なんとか時間を工面して日中に配達する。
それは何故か?
理由は簡単だ。
それはここが「墓場」だから。
誤解の無いように言っておくが、墓の住人に配達があるわけではない。その先の家に配達があるのだ。
その家は「大庄さん(仮名)」というお宅なのだが、墓を通らなければ、家に辿り着けない場所に建っている。
道路から山に向けて建っているお寺の奥に位置するお宅という事だ。
お寺は、裏山を墓としているが、なんとその墓所の奥に大庄さんのお宅は建っているのだ。
他の道からのアプローチは出来ない。
そもそも、このお寺自体がかなりの山に建っている。主要な道路からクネクネと。まるでこのお寺専用の道路を上がらなくてはならない。
その突き当りがこのお寺だ。
つまり大庄さん宅へは、お寺の裏山に広がる墓場を抜けるしか訪問はできないという事になる。
だから…帰りたかった。
大庄さん宅の配達は、どんなに忙しくても日中に終わらせたいという気持ちがわかってもらえるだろうか?
ケータイ小説
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