あの丘の上は異世界だったのか?
ボクは闇の世界を覗いてしまった
そこに……墓地があった。
さっきまで少し開けた場所だと思っていた所が…
その周りは木が生い茂っているだけだった筈の場所が…
ボクが今歩いてきた所が…
今は墓地に変わっていた。
そして…
そこにあの男が立っていた。
昨日、ボクにこの場所にあるお屋敷を尋ねた男。
まるで昭和初期風の格好のあの男が、墓地の真ん中で、少し首を傾げてこちらを見ている。
辺りはこんなに暗い闇なのに…、あの男は白く光っているように浮いている…
そして言った。
「私宛ですね…」
20メートルくらい離れているのに…
小さな声なのに…
耳元で話しかけられているように聞こえた。
あぁ…
このまま帰りたかった。
それなのにボクは答えた。
「いや、昨日聞かれたお屋敷宛てですよ」
小さな声だった筈だが男には届いたようだ。
「ですから私宛です。…どうぞ」
そう答えた男はボクを促すような素振りを見せた。
そしてボクは男の方へ歩き始めた。
ケータイ小説
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