あの丘の上は異世界だったのか?
ボクは闇の世界を覗いてしまった
山肌の道は進めば進むほどに、道でなくなり、ただの崖を上っているようになってくる。
すでに足元もよく見えないくらいに暗くなってきた時、ふいに少し開けた場所に出た。
パキ
また音が。
何だ?何が鳴っているんだ?
音の方向を確認しようと見渡したが、何も無い。
いや……細く、明かりが見えた。
辺りはもう真っ暗だった。
開けたこの場所はテニスコート半面くらいの広さだ。
その片隅で、弱く明かりが灯っているのが見える。
その方向に歩いていくと、そこには小さな小屋があった。
小屋は普通の物置程度の大きさで、ただ、板切れを貼り付けて建てたような粗末なものだった。
小屋には引き戸があり、その隙間から明かりが漏れていた。
(こんな所に…)
不審に思ったが、大体ボクは家を探しにここに来たのではなかったか。それなら明かりが灯っていて不思議だという事はない。むしろ、ここには家があり、人がいる証明じゃないのか?
その小屋に向かって声を掛けてみるが、全く返事は無い。
何度か試したが、まったく状況に変化はない。
(誰もいないのだろうか)
普通なら不在票を書いて持ち戻るところだが、ここにまた来るのはイヤだった。
(作業場なのかな…?明かりが灯っているけれど住居じゃないよな…)
ここで迷っていても仕方が無い。
ボクは引き戸を開けた。
しかし……そこは闇だった。
ケータイ小説
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