ボクは…誰と話したんだ?
この電話は何処に繋がったんだ…?
飛び出して闇雲に走った。
夢じゃない。確かに見た!
…住人には判らなかったのか?
だからあそこの夜の配達は嫌だったんだ!
18時以降なんかにしやがって!
グルグル廻る思考は、だんだんと所長への怒りに変わっていった。
そのおかげで少し冷静になれた。
有り得ない。
有・り・得・な・い!
あんな事。
107号室に電話する。
もう一度掛けるよ。
否定したいから。
「オカケニナッタデンワハ…」
繋がらなくなってしまった。
ははは…。パニックになると思ったが意外にも冷静でいられた。
…そう、思い出したから。
傷が…。傷があった。
あのクルマに。
降りてクルマを確認した時に見つけていたんだ。
そう!あったんだ。
俺のクルマに無い傷が!
そうだよ同じじゃない。
同じクルマなんかじゃないんだ!勘違いだ。
似ていただけだ。
クルマが無くなったのは単に移動しただけだ。
住人の方を向いていたのが一瞬だったんじゃなく、無意識のうちに何か会話したんだろう。
その間に…、という訳だ。
伝票も書き間違い。
電話が繋がらないのは何か転送とか…とにかく俺の知らないシステムのせい。
海鳴りもただの雑音!
そうだよ、そうに決まってる。
もういい。
今日は帰ろう。
明日所長に事情説明だ。
もちろん「やはり不明だけど電話が繋がらなくて持ち帰ってしまった」と。
多少申し訳ない素振りを見せるのも仕方ないだろう。
落ち着いてクルマを出す。
何てこと無い。全部勘違いだった。
運転しながら深呼吸をして落ち着こうとした。
その時!
「バンッ!」
何かがクルマに当たった。
慌てて降りる。まさか人を…。
しかし何も無い。
そんなに重量物が当たった感じではなかった。
だとしたら木の枝とか?
辺りを見回したが判らない。
生き物じゃなかったと思うが…。
クルマを見回していると…
「!!」
傷がっ!
あのクルマに付いていた傷が!
同じ場所に同じように。
う、うわあぁぁっ!
ケータイ小説
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